株式会社Irohakids 代表 大久保 遥 様 インタビュー

2021/11/15

株式会社Irohakids 代表 

大久保 遥 様

にインタビューしました!
東京都江東区で、児童発達支援及び保育所等訪問支援事業所を経営されています。

今の事業を始めたきっかけは何ですか。

起業する前は、幼稚園教諭として6年ほど勤務していました。

そこでたくさんの子どもたちと関わる中で、発達に遅れのある
お子さんやそのご家族と接する機会も多く、いち教員として何かできることはないか
自分自身で特別支援教育の勉強を始めたことが最初のきっかけです。

お子さんやご家族と関わる中で、具体的にはどういった気付きがあったのですか。

実際に子どもたちやご家族の様子をみていて
【幼稚園・保育園での保育と療育との切れ目】のようなものを感じることがありました。

保育と療育との切れ目といいますと。

例えば発達障がいを抱えたお子さんに関してですと、
午前中は幼稚園に通う、そしてまた午後からは療育施設に通うと。

その中で1日を通してその子へのアプローチであったり、関わり方について、必ずしも
それぞれの施設で同じでないこともあるわけです。

子どもたちからすれば、どこの施設で保育あるいは療育を受けるかは関係のない話で、
本来は、どこにいてもそのお子さんにとって一番適したアプローチや働きかけがあることが
安心できる環境といえます。

確かに、場所が変わるというのは保護者にとっても負担はあるかと思います。

そうですね、保護者の方々にとっても、午後はここで、
何曜日の何時はここで、といったお迎えや付き添いは
とても負担があるなと感じていました。

そこで、今運営をおこなっている【療保園】という形の
専門的な療育を基本としつつ、保育環境としても
1か所で提供できるサービスを考え、このスタイルに至りました。

児童発達支援以外の保育事業を、という風にはお考えになりませんでしたか。

はい、児童発達支援事業所として療保園の開設に至る前は、
認可あるいは認可外の保育事業やそのほか自主事業としての運営も視野には入れました。
私が保育士であるということもありますし。

ただそうなると、入り口として保育の必要性の認定があったり、認可外や自主事業の場合には
保育料の支払いが難しいご家庭はどうするのかなど様々な問題があります。

そこで色々な方向性を検討した結果、
 より安定的に、かつ、平等に
発達に不安を抱えるお子さんやそのご家族をサポートしたいと考え
児童発達支援事業所としてサービス提供時間を長くし、
療育も保育も1か所で可能な現在の運営形態にたどり着きました。

現在の会社・事業の運営理念を教えてください

お子さんだけでなく、そのお子さんを支えるご家族の変わらない生活、
お子さんに関わる方の未来が保障される、約束される社会をつくることです。

ホームページにもSDGsについて掲載されていますね。

はい、実際にこれまで発達障がいを抱えるお子さんと多く接する中で、
ご家族自身も様々な場面で育てにくさを感じたり、
成長過程で悩み、ご自身の仕事も最終的には辞めてしまうなど
親御さんとしても生きがいを無くされたというケースもあります。

そういった中で、実際にフルタイムで働く方も1日安心して療育を受けられる、
発達障がいという理由で断られてしまった習い事も
療育の一環として提供できるような施設を作ることで
お子さんだけでなく、ご家族や周囲の方の未来にもつなげたいと考えています。

そしてそのためには、弊所自体をサスティナブルな園にすることも大切だと考えています。

サスティナブルな園といいますと。

SDGsの目標の中にも掲げられていますが、
【働きがいも経済成長も】という観点から現場の職員(保育士や児童指導員等)の
仕事の重要さを共有し、プロとしてそれに見合った賃金を支払うこと、
さらには、子どもたちと関わることの楽しさや素晴らしさを感じて
活き活きと仕事ができる雇用環境を持続するよう取り組んでいます。

事業の特徴や運営する上でどんなことを心掛けていますか。

大きくは2点を心掛けています。

1つ目は、子どもたちの発達は100人いれば100通りあることです。

いわゆる「定型発達」と呼ばれる発達のパターンがありますが、
そもそも子どもの成長は100人いれば100通りあります。

この多様な世の中で、私たちはそれぞれの個性を大切にし、
ありのままの姿を受け入れ、自分の個性や得意なことを理解し、
自分らしさを見つけて成長していってほしいと考えています。

実際の療育内容としては、一つでも多くの可能性に気づくことを意識し
英語、リトミック、ヨガ等を通して「運動・感覚」「言語・コミュニケーション」であったり、
「人間関係や社会性」の構築に繋がるよう取り組んでいます。

2つ目は、子どもたちにとって最善の利益を大切にすることです。

私たちの考える子どもたちにとっての最善の利益とは、
「親御さんご自身がまず幸せであること」これに尽きます。

親御さんの気持ちが安定している、また周囲の家族が幸せな状況であれば
自然とお子さんへの目線やアプローチも優しいものになってくるはずです。

いわゆる「機嫌のよい大人」が近くにいることは、
子どもが伸び伸びと健やかに育つために、とても重要な要素であると考えています。

そのため、家族支援というところは事業運営の中でも特に意識し、
先ほども申し上げたような1か所でなるべく長時間のサービスを提供することで
ご家族の負担を減らし、定期的にご家族の不安や悩みを共有する機会を設けています。

具体的にはどういった機会を設けているのですか。

はい、子どもたちは職員配置のうえ別室で療育を提供しつつ、
その間保護者の方に集まっていただき、発達特性や親御さんの抱える悩みについて
月1回のペースで【いろは会】という保護者会を開催しています。

近所のおしゃれなカフェを貸し切っての“世界一おしゃれな保護者会”として、
◆発達や育児についての学びの場
◆保護者同士のコミニュケーションの場
◆同じ悩みを抱える者どうしのリフレッシュの場 など
その時々のテーマで、保護者の方々が自分らしく、決して引け目を感じることなく
気持ちを共有できる場所づくりを行っています。

これからの目標や展望があればお聞かせください。

現在も取り組んでいることではありますが、発達障がいについて
もっと知ってもらう、認知してもらうことを目指しています。

認知してもらうといいますと。

たとえば、発達障がいを抱えるお子さんのなかにも自閉スペクトラム症であったり、
ADHDであったり、知的障がいであったりと、抱えている症状や状態は様々です。

それぞれの症状について個別に理解してもらうというよりは、
誰しも発達障がいを抱える可能性はあること、
実際にそのことで生きづらさを感じている方、あるいは
そういったご家族がいるということを“自分ごと”として考えてほしいと思っています。

知ってもらうことで、どういった変化があると思われますか。

例えばですが、電車内で急に大声を出してしまうお子さんがいたとします。
その時に、大きな音が怖い、または感覚的に過敏になっているのかなど
発達障がいの可能性にも想像が及べば、単にその子がうるさいとか、
なぜ親が叱って止められないのか、といった苛立ちの発想にはなりにくいと思います。

少しの理解があるだけで、お子さんやそのご家族としては
生きやすいと感じられたり、安定して生活できることにも繋がります。

発達障がいというものが、世の中により認知されてきたとはいえ、
まだ理解がある方ばかりが現状ではないため、身近な存在として、
少しでも自分ごとと捉えて、認識していただけるようになればと考えています。

実際の活動としては、どういったことをおこなっていますか。

例えば、フライヤーを関係機関だけでなく、地域のスーパーや接骨院、
なかには焼肉屋さんなどにもお配りし、療保園いろはの活動を知っていただけるよう活動しています。

実際に、利用児童と地域の公園に行ったり、お散歩をする機会も多々あり
地域のみなさんにも発達障がいであったり、日々の子どもたちの活動を
ご理解いただけるよう、事業所としても取り組んでいます。

そのほかには、オンラインでも弊社のInstagramを活用し、インスタライブなどで
事業所の取り組みや活動など、発達支援に興味のある方だけでなく、多くの方に
まずは【知っていただく】活動を展開しています。

“地域へ”というところでは、今年9月から保育所等訪問支援事業も開始されたんですね。

はい、開所から2か月ほど経ち、おかげ様で江東区だけではなく、
近隣自治体の園からもお声がけをいただき、訪問させていただいています。

保育所等訪問支援に関しては、どういったことを意識されていますか。

基本的には、先ほどお話ししたビジョンや運営上心掛けていることは同じです。

障がいを抱えるお子さんやそのご家族が少しでも生活しやすい、
周囲に認められ安心した環境で過ごしていける、そういった観点から
教職員の先生方ともしっかりと連携をとり、支援をおこなっています。

少しそれますが、以前カナダのバンクーバーにあるDaycareで
Special care(特別支援)を学んだ経験を活かし、
国籍に関わらず福祉は平等に利用できるべきであると考え
弊社ではWebサイト内にEnglishページを設けています。

その中でSpecial careやSpecial needsという表現を使用していますが
児童発達支援も訪問支援についても、最終的なゴールとしては
スペシャルに、または、特別にしなくても、お互いのできること、苦手なことを認め合い、
障がいの有無や国籍を問わず、皆が生きやすい社会になることを目指しています。

今後繋がっていきたい方がいたら教えてください。

起業したいと思っている保育士、幼稚園教諭の方、幼児教育や療育に関わる方と
今後も繋がっていけたらと思っています。

保育士や幼稚園教諭に関しては、勤務条件や勤務地を確認し、そのなかで
自分の保育、療育方針に近いような園を選んでいくという風に、
どうしてもマインドとしては“雇用される”ことを前提に考えがちです。

ただ、自分自身が起業したように、自分がどんな形で社会に貢献したいのか、
障がいを抱えるお子さんやご家族のためにどんなことを実現していくのか、
そういった活動の選択肢があることも多くの方にお伝えできたらと思っています。

また、児童発達支援だけでなく、他の福祉サービスを提供している事業所の方とも
積極的に繋がりを拡げていきたいと思います。

他の福祉サービスですか。

もちろん障がいのあるお子さんへのサービスもそうですが、
当然ながら子どもたちも成長していくわけなので、大人になってからの
就職・就労であったり、子どもたちの将来について考える意味でも
地域の事業者の方と繋がりを拡げたいと考えております。

そのために、まず療保園いろはでの児童発達支援や保育所等訪問支援事業を
より多くの方に知っていただき、地域の皆さまに通ってよかった!と実感していただけるように
しっかりとしたビジョンのもとサービスを提供してまいります。

ありがとうございました。

子どもたちや親御さんにとって何か一番よい環境か、
最善の利益とは何かを見据え、サービスを展開されています。

厚労省の検討会においても触れられていますが、障害の有無に関わらず、
親の就労を支えられるような仕組みづくりは社会全体においても急務だと感じています。

特に児童発達支援については、障害を抱えた子どもに向き合うスタートラインであることも多く
親御さんにとって初めてのことで不安や戸惑いもたくさんあると思います。

そんな時に、定期的な保護者会やインスタライブでの活動など伴走支援という点においても
事業所として主体的に関わっていく姿勢がとても印象的なインタビューでした。

児童発達支援 療保園いろは
東京都江東区北砂3-1-11 ロータリーパレス北砂1F

電話番号:03-6666-5337
ホームページ:療保園いろは (studio.site)
Twitter   :@iroha_kids
Instagram  :@iroha_kids
Facebook   :@irohakids    

保育所等訪問支援  療保園いろは

電話番号: 03-6666-5337

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