2022/5/27
特定非営利活動法人埼玉障害者センター 事務局長
若山 孝之 様
にインタビューしました!
埼玉県鶴ヶ島市で、就労継続支援B型事業所を運営されています。
今の事業を始めたきっかけは何ですか。
2004年に鶴ヶ島市藤金に「心身障害者地域デイケア事業」として、
県の助成を受けつつ、無認可小規模作業所を運営してきました。
その後、障害者総合支援法の施行にともない、
就労継続支援B型事業所として指定を受け、今日にいたります。
事業体としては、20年近く運営されているのですね。
そうですね、運動団体をもとに、2003年に法人を取得しました。
障害をもった方一人一人の「権利保障」と「生活向上」を理念として活動しており、
総合支援法が施行された際も「一人も取り残すことなく」を「みんなで、一緒に」
「B型事業所」として移行を決めました。
普段は、事業所の中で「管理者」と伺っています。
はい、B型事業所へ移行3年目から「管理者」として携わっています。
その前は、養護学校の教員として37年間勤務してきました。
大学で障害児教育を学びはじめてから、管理者業務と通算すると
50年近く、障害福祉に関わってきたことになります。
半世紀とは、驚きです。
そうですね、気づくとあっという間です。
当初は漠然と教員になりたくて、大学に入ったのですが
養護学校の教員養成課程で学び、段々と障害福祉分野への想いが膨らんできました。
1979年から養護学校が義務化されたわけですが、その少し前の1976年に大学を卒業し、
当時の「富士見市立養護学校」に着任しました。
義務化の前に、埼玉県内に公立の養護学校があったのですね。
はい、義務化を前に、富士見市は、当時としては、県内でも先駆けた取り組みで
「全員就学」を実施しました。
その後も県内の養護学校に3校を経験しながら、
現場の教員として子どもたちと多く接する中で障害をもった子どもたちの
権利保障であったり、成長していく環境を
もっと良くしたいという気持ちで取り組んできました。
そこで教員時代から、障害者の生活と権利を守る埼玉県民連絡協議会(障埼連)の活動にも参加してきました。
会社・事業の運営理念を教えてください。
「障害を持っている方の権利を保障し、生活を向上させること」
これを理念にしています。
具体的にはどんなところに反映されていますか。
事業所あるいは法人として、どんな人もまずは「受け止め」、時にはともに悩み、
社会的自立を目指してサポートしています。
地域と力をあわせることで、障害をもった方が孤立しない体制も意識しています。
事業の特徴や運営する上でどんなことを心掛けていますか。
基本的には次の3つです。
1 工賃の向上
2 親なき後問題への対応
3 長いスパンでの職員の定着
工賃の向上は事業所を運営する上で、制度上もかなり求められてきていますね。
はい、そういった現実にも直面しています。
小さな作業所は厳しい側面もありますが、悲観するばかりでは始まりません。
弊所としては、時給60円の内職中心の作業から脱却して、
様々な新規事業に取り組み始めています。
具体的にはどういった内容でしょうか。
◆シイタケ栽培 ◆PCでの文書作成の受託 ◆野菜の宅配 ◆手工芸のレベルアップ など
あとは試験的ですが、近隣でとれた野菜の宅配、販売も考えています。
特にシイタケ栽培は人気も出てきており、菌床数を増やし通年販売も検討しているところです。
すまいるはうすは、ミニすまいるはうすも作っています(写真右)。
組み立て式で、お店になります。出張販売を計画しています。
ぜひお声掛けください。
【事業所】栽培するシイタケや手工芸品
【事業所】ミニすまいるはうす
親なき後については、どういった形で取り組まれていますか。
弊所の場合30代から40代で家庭から通う方も多いです。
今すぐではないものの、8050問題と言われるようにご家族に何かあった場合
入所施設など「暮らしの場」が必要になります。
「親あるうちに」の問題と考えています。
県内でも1600人を超える入所施設の待機者がいるといわれており
グループホームも、障害の重い人の受け入れはそう簡単ではありません。
職員の方の定着については、いかがでしょうか。
はい、弊所に限っていえば、職員は長く定着していますが、
障害者事業所では、「男性の寿退社」があるとも言われています。
「寿退社」自体が時代遅れな単語かもしれませんが、要するに男性職員が結婚を機に
この賃金では、子育てができないということで、泣く泣く、福祉職場より他の職種に転職するケースがあるんですね。
今、支援する立場にいますが、もうすぐ、支援される立場になるのです。
若い世代の職員が勤務を続けられる環境を作っていく必要があると感じています。
これからの目標や展望があればお聞かせください。
先ほどお話ししたような、事業収入、工賃収入の柱となるような
新規事業に積極的に取り組んでいくことですね!
利用者の生活向上のためにも工賃の向上には永遠のテーマであり、
今後も継続的に取り組んでいく必要があります。
そのためにも、若い世代の新しい風を取り入れていきたいです。
今後繋がっていきたい方がいたら教えてください。
どう事業継続を図っていくかです。他の法人と「人材交流」を行っていきたいとも考えています。
お互いに事業所の特徴を意識しながら、良い所、悪い所をふまえ運営や人材交流の中で
相互に可能性をひろげていきたいと考えています。
これからも地域に根差した活動で、事業所同士の定期的な交流会もはじめたいです。
若山さまご自身は、障埼連など様々な運動を展開されていますよね。
そうですね、障害をもった方の暮らしや生活向上のための運動は今後も行っていきます。
障害者運動の分野でも、我々60代がまだまだ頑張っています。
我々世代の経験やマインドを、少しずつでも次の世代につなげていくために
少しでもお役に立てればと、大げさかもしれませんが、
使命として担っていきたいと思います。
ありがとうございました。
若山さまには、地元鶴ヶ島の「障害者支援ネットワーク協議会」の活動でもお世話になっています。
インタビューを通して、これまで障害福祉業界に携わってこられた強い信念と、
養護学校の教員時代から、長きにわたり、障害のある子どもたちに寄り添ってきた
歴史を感じられました。
「横に褒めず、縦に褒める」といった、周りと比べるのではなく
その人自身の成長に対してのアプローチ姿勢を学び、
子どもたちと接する中でも、この意識を忘れず活かしていきます。
すまいるはうす
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