2022/6/25
有限会社オールフォアワン 代表
石井 英寿 様
にインタビューしました!
千葉県で、通所介護や日中一時支援の事業所、介護保険外事業もを経営されています。
今の事業を始めたきっかけは何ですか。
20代後半で大きな転機がありました。
当初は精神科のソーシャルワーカーとして勤務していましたが、
元々お年寄りと関わる仕事をしたい思いがあり、老健に異動しました。
そこで勤務しながら、高齢者の方との関わり方に少しずつ疑問を感じるようになりました。
疑問とは、どういったことでしょう。
もちろん当時の法人を批判するわけではないのですが、
大きな法人だったので、どうしてもタイムスケジュールに迫られたケアになります。
そうすると、何人ものおじいちゃん、おばあちゃんたちに時間割で動いてもらい、
食事が終わりました、はい次はお風呂と、本当に機械的に動いてもらう日々でした。
当然ですが、それぞれの方に“こうしたい”というお気持ちや
これまでのライフスタイルがあります。
そこにまったく寄り添うことができない日々にもどかしさや違和感を感じていました。
そこでの違和感や利用者さんに対するお気持ちから独立を決意されたのですか。
そうですね。
~もっと一人一人の方と深く関わりたい~
~残された時間をもっと豊かに、好きなことに費やしてほしい~
そんな思いから、少しずつ経営者としての独立を決めました。
今の奥様とも当時出会われたとか。
はい、部署は違いましたが当時からの縁で今は奥さんです。
そのころ、妻が三好春樹さんのファンで「あなたが始めるデイサービス」も読みましたね。
私自身も一生に一度しかない人生ですから、せっかくなら好きなことをやってやろう!と
30歳の時に法人を立ち上げ、独立しました。
会社・事業の運営理念を教えてください。
ありのまま、その人らしくいられる社会
~ONE FOR ALL,ALL FOR ONE~
いしいさん家の目指すべき方向、ビジョンとして掲げています。
ミッションも教えてください。
どんな人でも取りこぼさない
~介護保険制度外で利用する人も、スタッフも~
これを社会的な使命として、スタッフとも共有しています。
社名にもビジョンが入っていますね!
はい。過去の経験から独立したので、このワンフレーズに集約されると思っています。
認知症であっても、ありのままでいていいし、色んな人がいていいんです。
無理やり施設の側にあわせるのではなく、培ってきた生活リズムを大切に
我々がそこに寄り添っていく、そんな思いでいます。
事業の特徴や運営する上でどんなことを心掛けていますか。
その人らしく、ありのままで。
とにかく自然体でいてもらうことを、大切にしています。
これまでに看取りも何十件とみてきましたが、
人生の最期までどう自分らしく生きるか
自分自身含め、本当にそこに辿りつくまで
本当に好きなことに取り組んで、時間を豊かに使ってほしいと感じています。
延命に関しても、ご本人がどういったことを最期望んでいるのか、
家族と一緒に考えられたらと思っています。
延命に関しては考え方も色々ですね。
はい、もちろん胃ろうや各種の延命治療を否定するわけではありませんが、
人が少しずつ弱り、死へ向かっていくことは誰にでもある自然の摂理です。
認知症だって、ある意味で自然なことなんです。
ごっくん、と飲み込めなくなった時は、
人間が少しずつ死に向かっていくところなんですね。
人間としての尊厳としてどうか、ご本人やご家族でないとわからない部分もありますが
我々はその気持ちに寄り添い、黒子として支えていければと思っています。
介護保険外の事業にも取り組んでいらっしゃるとか。
はい、宿泊の自主事業や「泉湧会」という同じ境遇にいる家族さんが、
悩みや感じていることを吐き出せる家族会も運営しています。
一泊旅行の家族部屋が始まりで、定期的に続けている事業です。
先日は、急遽ホームレスの方も受け入れておられましたね。
そうなんです、放っておけないんですよ。
全身タトゥーで驚きましたが、困った方がいれば可能な限り受け入れますし
行政への橋渡しや必要に応じた介護事業の利用促進も我々の仕事だと思っています。
スタッフも皆さんも驚かれたのでは?
はい、私は自分の思いでどんどん進むタイプなので、普段から
スタッフにも苦労をかけている面はあるかもしれません。
皆それぞれ考えをもって勤務してくれているので、
法人としての姿勢を理解してもらうためにも、ビジョン・ミッションを言語化し
会社全体での理念をもって進んでいきたいと考えています。
これからの目標や展望もお聞かせください。
これからの目標としては、多世代間で交流できる居場所、環境作りですね。
高齢者の方だけではないんですね。
はい、子どもも高齢者の方も集える場を常に意識しています。
昔って、三世代だったり、なんなら四世代くらいの大家族がありましたよね。
それが今は核家族化が進んで、おじいちゃん、おばあちゃんと交流する機会がなくなってきています。
確かに、我が家もその典型です。
家の中におじいちゃん、おばあちゃんがいると特に意識しなくても、
耳が遠くなってきたのかな
→じゃあ、ゆっくり話そう、大きい声で話そう。
とか、色々な気づきがあるんですね。
また、生活の中で“命の限り”というか、老いていく、あまり食べなくなってくる、
少しずつ弱ってくるというのを“肌で感じる”機会も出てきます。
これって老いを子どもに示すという意味で、おじいちゃん、おばあちゃんの
【最後の大事な役割】なんですよね。
年齢が進んで介護が必要となることは、ネガティブなイメージだけではないと。
そうですね。高齢者は生産性がない、なんて表現される方もいますが、
それは根本的に違っていて、次の世代である子どもたちに自然な形で“老い”を感じてもらい、
おじいちゃん、おばあちゃんからの“優しさ”を繋いでいく。
そんな大事な役割があると思っています。
多世代の居場所が作れるよう、新しい取り組みもあるんですよね。
はい、ironnaプロジェクトを新しく進めています。
ironnaプロジェクトとはどういったものでしょう。
ironnaプロジェクトは52間の縁側 「みんなの居場所」を作る!
をコンセプトに、色々な方にご協力いただきながら進めています。
介護施設としてデイサービス、日中一時支援をするほか、
子どもの遊び場、共生カフェ、障がいや生きづらさを抱える人の就職支援など
制度の枠にとらわれない「取りこぼしのない支援」を目指す施設です。
【八千代市】建設中の52間の縁側イメージ
「ごじゅうにけんのえんがわ」と読むのですね!
はい。建築士・山﨑健太郎さんに命名していただきました。
縁側とは、廊下として”部屋と部屋をつなぐ場所“でもありますが、
”外と中をつなぐ場所“でもあります。
それが94メートルほど続くように設計されていて、
これを昔の長さでいう「間(けん)」に換算すると52間になるんですね。
ここでも会社のビジョンが活きてきますね。
この52間の縁側は“向こう三軒両隣”みたいなものをイメージしていて、
昔でいう長屋の雰囲気にしていきたいです。
単なる箱物に終わるのではなく、また“介護”という概念にとどまらずに
認知症は怖いものではなく、老いは自然なことであると
無意識に体感できるような空間を作ります。
これまでもミニ駄菓子屋やジャブジャブ池なんかもやっていますが、
子どもたちが気軽に寄って、地域のおじいちゃん、おばあちゃんと触れ合えるような
そんな居場所づくりを常々意識しています。
今後繋がっていきたい方がいたら教えてください。
介護職員はコンスタントに募集しています。
子連れ出勤、介護者を連れての出勤もOKです。
いしいさん家には色々な人がいて、それこそ大家族のような暖かい雰囲気で過ごしています。
ボランティアとして応援して頂ける方も募集中です。
利用者さんの話し相手や食事や掃除、洗濯等、家事のお手伝いなど
地域の“人が好き”な方と繋がっていきたいですね。
地域の若い方にもぜひ知ってほしい事業ですね。
そうですね。本当に介護って、専門性はもちろん感性や気持ちが豊かでないと難しい仕事です。
世の中では、介護や保育に関して“誰でもできる仕事”といった認識の方もいますが
それぞれの職員がプロフェッショナルとして活動していることをもっと知ってほしいです。
そのためにも発信し続け、少しでも多くの方に私たちの活動を知ってもらえたらと思います。
これからもビジョンの実現に向けて、突っ走ります!
ありがとうございました。
行政書士をしていると、何のサービスなのか制度の枠に囚われがちです。
“制度を考えると一歩踏み出せない”という石井さんの言葉が印象的でした。
本当に地域社会にとって何が必要か、自主事業も含めて
精力的に取り組んでいる石井さんだからこそ、説得力のあるインタビューでした。
石井さん出演のドキュメンタリー映画「ただいま それぞれの居場所」も是非観ます!
ありがとうございました。
いしいさん家(通所介護)
千葉市花見川区柏井4-26-4
電話番号:047-481-3220
ホームページ:宅老所いしいさん家
Facebook :@ishiisanchi
Twitter:@manahanasou
みもみのいしいさん家(通所介護)
千葉県習志野市東習志野5-23-1
電話番号:047-472-8505
いろんな(通所介護)
千葉県八千代市米本1286番地
みんなのいしいさん家(日中一時支援事業所)
いしいさん家の介護相談室(居宅介護支援事業所)
いしいさん家のお泊り(自主事業)
介護保険外事業/看取りまで、家族と一緒に。